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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

スウェーデンの高齢者ビジネス(3)

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

前回はスウェーデンの高齢者ビジネス、開けやすい容器・包装プロジェクトについてご紹介いたしました。今回も高齢者ビジネス編(3)として、政府主導の『賢い』製品開発プロジェクトについてご紹介いたします。

『Teknik for aldre』高齢者のための技術

『どんな製品が高齢者の日々の生活をより快適なものにしてくれるのだろうか?』この質問が、生活補助ツール研究所(Hjalpmedelsintsitutet=HI)とスウェーデン国民年金者機関(Pensionarernas Riksorganisation=PRO)によって2007年に開始されたプロジェクト『Teknik for aldre=高齢者のための技術』の主な議論点だ。

これはスウェーデン政府主導で生活補助ツール研究所に委任されたプロジェクトで、最重要ポイントは市場における高齢者のためのよりよい製品、新しい技術そして住居の開発の活発化を促すことにある。
初年度の予算として22百万クローナ(=約264百万円:レート2009年7月)が用意された。

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生活補助ツール研究所発行のプロジェクトカタログ

今後スウェーデン人口が高齢化を続ける中で、家庭内における高齢者の生活補助ツールの需要はより重要になると考えられている。
2008年10月の時点で65歳以上のスウェーデン人は、160万人、スウェーデン全人口の約17%だった。
そして7年後には200万人に達すると予想されている。
しかし残念なことに、今日、市場に存在する生活補助ツールのセレクションは十分なものではなく、またそれらの存在自体が、本当にそれを必要とする人々の間にあまり浸透していない。


ベングト・アンデルソン氏

このプロジェクト責任者である生活補助ツール研究所のベングト・アンデルソン氏は、次のように語る。
「良い製品への知識や興味を広げることで、高齢者側からの需要を促し、そしてそれにより企業側からの供給を促進することを期待しています。高齢者の生の声というものは非常に重要なもので、このプロジェクトが多くの企業に、増加を続ける高齢者グループのための『賢い生活補助ツール』の開発を促すことを願っています。」

PROの研究サークル

PRO、スウェーデン国民年金者機関は、1942年に設立されたスウェーデン最大の年金者組織だ。
年金受給者であれば誰でも会員になることが可能で、年会費は250~300kr(約3,000~3,600円。レート:2009年7月。)だ。
会員数は2009年1月で約40万人で、その影響力は高く評価されており、スウェーデン政府とも定期的なミーティングの機会を設けられている。

090722-3.JPG PROのホームページ www.pro.se (スウェーデン語)

2007年のPRO定例会議の場で、生活補助ツール研究所がこのプロジェクトについてのプレゼンテーションを行うと、会員達は大きな興味を示した。
このプロジェクトのために用意された『Smarta tingスマータ・ティング(=賢い物たち)』というセットがPROの研究サークルの代表者たちに配布された。

研究サークルではこのセットを用いて、今日市場にある生活補助ツールの評価を行う。
また同時にサークル参加者側から日常生活の助けになると考えられるツールの提案も行うことができる。
サークルへの参加はPRO会員であれば誰でも可能で、『スマータ・ティング』セットも無料で入手できる(送料のみ自己負担)。

『スマータ・ティング』セットとは

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無料配布された『スマータ・ティング』

以下は、研究サークル参加者たちが手にする『スマータ・ティング』セットの中に入っているものの一例だ。

‐今日市場に存在する生活補助ツール製品のサンプル数点
‐写真や映像のDVD
‐ディスカッションベースとなる資料
‐その製品が何に使うものかを各参加者が想像する秘密の袋

また市場に何を求めているかの参加者たちの生の声もサークルごとに取りまとめられ、本部で集計される。
PROの研究オンブズマンであるゲード・クラング氏は「この『スマータ・ティング』は確実に会員たちの間の活発な活動を促進していくことと思います」と語る。

『スマータ・ティング』のホームページ

研究サークルと平行して、『スマータ・ティング』のホームページが開設された(リンク:http://www.hi.se/sv-se/Hjalpmedelstorget/Smarta-ting/-/Valkommen-till-Smarta-ting/ スウェーデン語)。
ホームページ内では日常生活の様々な場面やシチュエーションを想定して、おすすめの生活補助ツール製品が検索できるようになっている。
イラストを多く用いたホームページはとても見やすくわかりやすい。シンプルな操作で様々なシチュエーションに適したツールを検索することができる。手順は以下の通りだ。

1)家のイラストで、『リビング』『キッチン』『バスルーム』など日常生活のシチュエーションを選択する。

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2)各部屋での行動を選択する。例えば、以下のキッチンページでは『オーブン焼く』『料理の計画』『計量する』『食器を洗う』『容器を扱う』などの選択肢がある。

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3)そこで例えば『容器を扱う』という選択をする、現在普通に購入が可能な以下のようなツールのリストが現れる。

  090704.jpgビンの蓋を開ける際にすべりにくくする。

 090722-8.JPGペットボトルなどの蓋を少ない力で開けることができる。

   090705.jpg  様々なツールが一つになって容器の開封を助けてくれる。

まとめ

この政府主導の大掛かりなプロジェクトは、政府の主導力が強くまた組織化の進んだスウェーデンならではだと感じられる。
PROという組織をうまく利用し、高齢者自身がで市場の生活補助ツールの開発を促していくシステムにより、より現実的でよりニーズにあった製品を開発することが可能となる。
高齢者が生活しやすいといわれるスウェーデンでは、このようにしてより生活しやすい環境づくりが常に進められているのだ。
 

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