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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

スウェーデンシニア世代と情報テクノロジー(3)

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

前回はスウェーデンの福祉システムについて紹介いたしました。今回はスウェーデンの介護サービスと情報テクノロジーについてご紹介いたします。

オンライン介護日記 

2009年11月25日、スウェーデンの首都であるストックホルム市は全国に先駆けてインターネットを利用した『オンライン介護日記 (Omsorgsdagboken) 』というプロジェクトを開始した。これは、ストックホルム市が提供する自宅訪問介護サービスを始めその他の介護サービスを利用する高齢者と、その家族、親戚たちのための新しいシステムだ。このシステムにより、高齢者と離れて暮らす家族や親戚達はリアルタイムで、高齢者がどのようなサービスを受けているかを確認することができるようになった。

訪問介護日記の内容

この『オンライン介護日記』は、介護を行う介護士によって、特別な携帯型情報端末(PDA)を利用してリアルタイムにマスターコンピューターに介護の情報がアップデートされる仕組みになっている。この日記は、高齢者自身と高齢者の周りの人々(家族、親戚など)が、どのような介護が行われているかをインターネット上で確認することができるシステムだ。

具体的には、例えば、どんな介護が行われたかという具体的事項や、今後の介護計画、また連絡先の情報などが掲載されている。これにより、高齢者自身及びその周囲の人々は、決定された介護計画を確認しやすくなる。
具体的にこの日記に記載される内容は、以下のものだ。

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このオンライン介護日記は、デイケアセンターや介護施設、高齢者住宅などにおいても利用されるが、特に介護レポートの部分に関して最も大きなメリットを受けると考えられているのは自宅訪問介護を利用する高齢者及びその周辺者たちである。これまで高齢者の自宅で行われている介護の具体的な様子が見えにくかった部分が改善されると考えられている。

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散歩中の高齢者と介護士

日記の閲覧について

高齢者の個人情報がたくさん含まれるこの『オンライン介護日記』の閲覧は、高齢者自身と高齢者が認めた人のみが可能となっている。この閲覧にはインターネットIDと呼ばれる、国から発行されるIDが必要となる。このインターネットIDは、一般に郵便局、銀行、電話局など特定の機関が国から発行の許可を受けており、一般の人々はこれらの機関を通してIDを取得することができる。このIDは現在広く社会で利用されており、例えばオンラインで税金の申告を行ったり、銀行の手続きを行ったり、社会保険を申請したりする場合などに使われる。  

実際にこの『オンライン介護日記』を閲覧するには、ストックホルム市の公式ホームページからログインするシステムになっている。このホームページ上では、この他ストックホルム市の高齢者介護についてのより詳しい情報を得ることができる。また、インターネットIDの取得方法や様々なインターネットサービスについての情報も掲載されている。

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ストックホルム市の公式ホームページ http://www.stockholm.se/

プロジェクトに関する記事

以下は2009年11月25日付でスウェーデン大手新聞ダーゲンズ・ニューヘッテル紙(Dagens Nyheter)に取り上げられたこの『オンライン介護日記』に関するレポートだ。全国的にも注目度が高いことがうかがわれる。
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「おばあちゃんはもうお昼ごはんを食べたかな?」「お父さんは、いつシャワーをあびただろう?」介護サービスを受けている高齢者の家族達は、自分の肉親がどのように日々を過ごしているかを心配してきた。今、テクノロジーの力でその心配は少なくなりそうだ。
水曜日(11月25日)に、ストックホルム市の高齢者担当弁務官であるエバ・サミュエルソン氏により、ハントベルクス通りにある介護施設で、『オンライン介護日記』プロジェクトが開始された。その施設内の介護士たちはすでにこのプロジェクトのためのコミュニケーションツールとなるPDAを受け取っていた。

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 ストックホルム市の高齢者担当弁務官 エバ・サミュエルソン氏

介護士の一人、フランシスコ・ロボス氏はこのPDAがどんなに簡単に活用できるかを見せてくれた。いくつかのボタンをクリックしていくだけで、簡単にマスターコンピューターに情報を送信することができる。その情報は、例えば「ハンスさんは今、朝食、衛生の手伝いを受け、良好な状態です」などといったものだ。

これはとてもシンプルな情報だが、例えばスコーネ県(ストックホルムから約500km離れた南部の県)に住み、ハンスさんの様子を心配している家族や親戚たちにとってはとても大切な情報だ。  

高齢者の家族や親戚たちがこういった情報にアクセスするためには、インターネットへの接続が可能な環境と、インターネットIDが必要になる。さらに、最も重要なポイントは、ハンスさん自身が、彼の家族や親戚に彼の介護日記へのアクセスの『許可』を与えるということだ。  

「自宅で一人暮らしをしている多くの高齢者たちが、介護士が自宅訪問介護に訪れているにもかかわらず、家族たちに『何日間も誰とも会っていない』と話したりします。それは例えば痴呆症の初期症状のサインとして役に立つことがあります」と、エバ・サミュエルソン氏は話す。
既に介護日誌というものは存在していたが、それがインターネット上でアクセス可能となったのは初めてのことだ。これは高齢者自身だけでなく、家族や親戚たちにとっても大きなサポートツールとなるだろう、とサミュエルソン氏は強調する。  

しかし、だれでもインターネットに関する知識やアクセス可能な環境があるわけではないのではないだろうか?という質問に対し、サニュエルソン氏は「確かに、その通りです。でも、今はこれからの将来のことを考えて計画をしていかなければならないのです」と答えた。サミュエルソン氏によると、つい先日高齢者施設で暮らす95歳の男性に、インターネットの接続口はどこにあるのかと聞かれたという。
このプロジェクトには、約700万クローナ(約9100万円。1クローナ=13円)の予算が使われた。
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まとめ

インターネットの普及率が世界でもトップクラスのスウェーデン。シニア世代の間でも、年々その普及率は向上し続けている。行政が積極的にインターネットの利用を取り入れ、新しいプロジェクトを企画、実行する姿勢はとてもスウェーデンらしいといえるだろう。今現在、どのくらいの人がこの『オンライン介護日記』を利用するかということだけでなく、将来的にこのようなシステムがどのくらい必要になってくるかということを重視してプロジェクトを進めることで、常に時代の先端をいくシステムを作り続けていくことができるのである。
 

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