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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

シニアの活躍

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

シニア女性による、女性の健康を考えるNPO団体

今年64歳となるアレクサンドラ・チャールス氏は40年前のストックホルムで『ナイトクラブの女王』として名をはせていた。
1968年、若干22歳にして、当時スウェーデンではまだめずらしかった
会員制の高級ナイトクラブ「アレクサンドラス」をオープンし、
その後20年間にわたりストックホルムのナンバーワン・ナイトクラブとして
各界セレブリティやロイヤルファミリーなどにも愛用され、成功を収めた。
そんなかつての『ナイトクラブの女王』は、シニア世代と呼ばれる年齢となった今日、まったく別の世界で活躍している。
PR・マーケティングのコンサルタントとして活躍する傍ら、
中高齢女性の健康を考えるNPO団体、『160万人クラブ (1.6 miljonerklubben) 』を主宰し、注目を集めている。
 
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『160万人クラブ』主宰のアレクサンドラ・チャールス氏
 

『160万人クラブ』とは

『160万人クラブ』とは、45歳以上の中高齢女性のための女性の健康を考えるNPO団体だ。160万という数字は、12年前この団体が発足した当時の45歳以上の女性人数を表している(現在は約200万人)。
この団体の会員になるには45歳以上の女性であるという限定があるにもかかわらず、現在では約33,000人以上の女性が会員となっている。
 
団体の公式ホームページには以下のメッセージが記されている。
「女性は、人生の最終段階において、より悪い、より時代遅れな診察を受け、より安価な薬を処方され、
より悪い救急治療やより質の低いケアを受けています。当然、女性も男性と同じ条件で治療を受けられるべきですが、
そのためにはまず女性を医学研究の対象に取り入れることが先決です。」
 
160万人クラブの公式ホームページ http://www.1.6miljonerklubben.com
 
具体的な活動趣旨としては以下のようなものがある。
 
・中高齢女性の健康に関する情報の普及を図る。
・中高齢者医学研究及び医学者教育における女性の視点の導入を推進する。
・中高齢者女性の健康に関する総合的なアプローチを推進する。
・中高齢女性たちが今日行われている医療ケアにより高い水準を求めるよう働きかける。
・中高齢女性の病気に関する研究により多くの情報が提供されるよう働きかける。
 
今日のスウェーデン社会において、この団体は中高齢女性の医学研究の分野において女性の視点を導入させ、
女性の健康に関する討論を呼び起す重要な団体と認識され、政治家や各業界の権力者からの注目を集めている。
 
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スウェーデン王妃シルビア女王もアレクサンドラ・チャールス氏の『160万人クラブ』に注目している。

中高齢女性のための医学研究

スウェーデン・医療社会団体(Svenska Lakaresallskapet)の心臓専門医のカーリン・シェンク・グスタフソン氏(Karin Schenck-Gustafsson)と婦人科医のブリット・マリー・ランドグレン氏(Britt-Marie Landgren)によると、
現代の医学研究というのは男性の身体を『標準』とし研究の基準としているという。
 
しかし、実際のところ女性と男性の身体というのは生物学的に異なるものであり、
例えば心臓発作などの場合はしばしば女性には男性とは異なる症状が見られるという。
もし医師が女性に対してより正確な診察をし、より適切な処方箋をだし、ケアし、リハビリを行おうとするならば、
この男性と女性の違いがもっと研究されていく必要があるという。
 
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チャールス氏(写真中央)と心臓専門医のグスタフソン氏(写真右)
 
それは、高齢者医療についても同様のことがいえる。
身体的な衰えが顕著となる人生の最終段階において、医療は大変重要な意味を持ってくる。
性別に関わらず、全ての高齢者が最良の医療をうける権利をもっているはずなのに、
実際には女性に関する医学研究の遅れにより、高齢女性達は平等な医療を受けられていない。
 
チャールス氏は、この中高齢女性の医療および医学研究の現状を改善するために、
女性の、女性による、女性のための強力な圧力団体を作る必要があると考え、このNPO団体を設立した。
『160万人クラブ』には前出の二人の医師を始め、多くの専門家たちがその趣旨に賛同し活動に協力している。
 

『160万人クラブ』の誕生と著名なシニア女性たち

団体設立にあたり、社会に中高齢女性の医療・医学研究の改善の重要性を認めさせるためには、
世間の注目を集めることが重要となるとチャールス氏は考えた。
これまでの経験から、世間に対して何らかのインパクトを与えるためには、
一人の力ではなく強力なチームを結成する必要があると考えた彼女は1998年ある小さな夕食会を催した。
 
その夕食会に集まったメンバーは、スウェーデン社会の様々な分野で活躍する著名なシニア女性たちだった。
チャールス氏の団体設立の目的、意向を聞いた彼女達は、すぐに賛同し、あらゆる方面からの協力を約束した。
その夕食会に集まったメンバーは、皆現在70歳を過ぎているシニア女性たち。
長年にわたり、それぞれの世界で活躍してきたスウェーデン人なら誰でも知っている有名人ばかりだ。
 
・ソルヴェイグ・テーンストロム(Solveig Ternstrom) 1937年生まれの女優。
  2006年よりスウェーデン・中央党の国会議員としても活躍。
・リッル・バブス(Lill-Babs)1938年生まれの歌手・女優。
・リッル・リンドフォーシュ(Lill Lindfors) 1940年生まれの歌手。
・グニッラ・ポンテン(Gunilla Ponten) コスチュームデザイナー。
・ケシュティン・デッラート(Kjerstin Dellert) 1925年生まれのオペラ歌手。
     
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左からテーンストロム、バブス、リンドフォーシュ、ポンテン、デッラート。
いずれもスウェーデンでは非常に知名度の高い女性ばかり。
 
有名人を最前線にすえることの重要性について、チャールス氏はこう語る。
 
「彼らは経験があり、何かを達成したことがある人たちです。人々は、
例えばソルヴェイグ・テーンストロムのような女性をすぐに認識することができます。彼女は火山のようなもの。
彼女が、話せば人々は耳を傾ける。
その内容が、過疎地で会社を経営することの難しさであっても、
自分の年老いた母親にどうやってよりよいケアを与えることができるかということであってもね。」
 
パワフルで存在感のあるシニア女性たちが広告塔となったこのNPO団体は、
セミナー、講演会、旅行などのアクティビティーや、
またメディア出演などを通じて中高齢女性を始め多くのスウェーデン人たちの関心を呼び起こしている。
 

自由で柔軟な発想

チャールス氏は常に新しい試みを続けている。
例えば、イギリスの映画、「カレンダーガールズ」をみたときには、そのアイディアをスウェーデンにも持ってきて、
スウェーデン版「カレンダーガールズ」の出版を始めた。
「カレンダーガールズ」とは、高齢女性たちが肌の露出の高いポーズで写っている写真を使った年間カレンダーで、
スウェーデンでは販売を始めた2005年以来約100万クローナ(約1300万円、1クローナ=13円)を売り上げている。
このカレンダーにより得た利益は、中高齢女性医学研究のために、
ストックホルムのカロリンスカ・大学病院研究所のジェンダー医学センターへ寄付されている。
 
現在64歳となるチャールス氏は、今後さらにシニア世代の女性を代表する存在として益々の注目を集めることだろう。
自由で柔軟な発想により、まだまだたくさんのアイディア・意見が飛び出してくるに違いない。
 

まとめ

スウェーデンでは、男女平等が当然視され女性が活躍する場は多い。
それはシニア世代においても同様だ。シニア女性ならではの発想で、
自分たちの健康の権利のために前向きに活動を続ける『160万人クラブ』。
 
この団体の活動により、スウェーデンにおける中高齢女性の健康、医療が今後どのように変化していくのか、注目されている。

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