2021-09-30 17:00:00

電動自転車でお出かけ

スウェーデン在住の松下です。

9月24日現在、covid-19のワクチン1回目接種者は、18歳上で83,4パーセント、2回目で75,9パーセントとなっています。9月29日から、レストランや、テーマパーク、イベントなどの開催にかけられていた制限が撤廃されますが、引き続き、全国民には症状がある場合の対処法（人との接触を避けるなど）が求められます。特に、18歳以上で予防接種未接種の国民に対しては、感染や感染拡大のリスクから、リスクグループに入る人や、70歳以上のお年寄りとの接触を避けるよう強調されています。私は、公衆衛生省の表現の仕方から、国民が、一人一人の判断や責任ある行動ができるか試されているように感じています。今回の制限の撤廃が早すぎるのではないかと言う人もいれば、経済の回復のためにいい流れだと言う人もいて、スウェーデン社会にどことなく先が見えないような雰囲気を感じています。

さて、今回は、セーデルマンランド県にあるトローサ市の、お年寄りをサイクリングに連れ出すプロジェクトについて紹介したいと思います。

トローサ市には、非営利のプロジェクト”年齢制限のないサイクリング”が運営されているのですが、これは、ボランティアでお年寄りの親戚や家族が、電動自転車に介護施設に住むお年寄りを乗せてサイクリングに連れ出すというものです。プロジェクトをトローサ市で始めたグループの一人、ボリエシェレーンさんは、多くのお年寄の家族がプロジェクトに参加できればと思っています。家族は、お年寄りを訪問したいと同時にお年寄りを外に連れ出したいと思っています。18歳以上で自転車に乗れる人であれば、誰でもボランティアに参加できるとのことです。

電動自転車は、2人まで乗せられるタイプのもので、雨風よけのカバーが付いており、ひざ掛けなどもしながら、お年寄りにとって快適なものになっています。電動自転車は、日本の人力車のような形で、自転車をこぐ人が進行方向の後ろ側に座り、前にお年寄りの座席があるというもので、1時間ほどかけて、5-6キロメートルを移動し、サイクリングを楽しみます。介護施設内で、お菓子をつまみながらお茶を飲むというのもいいのですが、複数家族が一緒にサイクリングに出かけるというのも、お年寄りにとって新しく、いい刺激になるのではと考えられています。トローサ市では、市の助成で２台の電動自転車が追加されることになっており、もうすぐ５台の電動自転車が稼働可能とのことです。

年齢制限のないサイクリングは、サイクリングがもともと盛んだったデンマークが発祥の非営利プロジェクトです。年齢に関係なく誰もが外に出て自転車に乗る機会が与えられるべきとの考えから、介護施設と連携して、外に出る機会の少ないお年寄りが、外出したり、外の風を感じたりすることができるようにと2012年に始められました。現在では５０カ国で2200のグループがこのプロジェクトに取り組んでいます。ボランティアでお年寄りを自転車に乗せる人はパイロットと呼ばれます。

年齢制限のないサイクリングのプロジェクトは、５つの理念を掲げています。

それは、優しさ、悠々さ、物語を通して伝えること、関係、年齢制限がないことです。

サイクリングは、お年寄りや自力で外出できない人に簡単に提供するという、”小さな贈り物”、ゆったりとした時間と、風を肌に感じられるような悠々とした空間をお年寄りに提供します。お年寄りの人生経験、物語そして知恵がサイクリングを通した対話によって引き出され、サイクリングに関わる人たちは意義のある関係を築くことができます。そのことは、お年寄りの喜びを生み、お互いへの信頼や生活の質を上げ、世代を超えた関係や友情が生まれることも期待されています。